【GⅠ エリザベス女王杯】牝馬の時代、それゆえの……
今週から年末の有馬記念?ホープフルS?東京大賞典?まで、怒涛の7週というか8週というか……、の連続GⅠとなります!今年は「GⅠは全部書く!」を決めている当ブログも、年末の東京大賞典まで毎週更新してまいりますので、益々盛り上がる競馬シーンを皆さんと一緒に堪能したいところです。
では、本日のテーマであるエリザベス女王杯は、こんなポイントから。“牝馬の時代”なんて言われる現在の競馬界ですが、それゆえに……?の珍現象に触れてみたいと思います。
時代がつくった空洞化?
天皇賞・春のフィエールマンを除く牡牝混合GⅠをすべて牝馬が制した昨年ほどではないにせよ、今年も大阪杯、宝塚記念は牝馬のレイパパレ、クロノジェネシスが勝利し、従来であれば牡馬の独壇場だった天皇賞・春、菊花賞においても牝馬が馬券に絡むなど、今年のGⅠ戦線も相変わらずの“牝馬の時代”と言って良い情勢にあります。
しかし、そんな“牝馬の時代”なのに……、もしかしたら、だからこそ……?なのか、牝馬の頂点を競うここ、エリザベス女王杯に集まったメンバーは、意外にも低調な構成となりました。
GⅠ初出走が8頭、このうち重賞初出走が4頭、また別の視座で見ればOP入りを果たしていない馬が2頭出走。加えて、このレースで古馬が背負う56㎏を経験しているのは、ウインマリリンとレイパパレの2頭のみ。格だけでみれば「あれ?牝馬の時代……?」となるわけです。
でも個人的には、それもそのはず!というが見解で、現在の育成技術・環境が高度に整備されたことにより、牝馬の体調管理、トレーニング方法が確立され、“そもそも牝馬が牡馬より弱い”ということがなくなってきているのは明らかです。
そして、力差を埋められる育成・トレーニングがしっかりとあるからこそ、牡馬に対して2㎏軽い斤量で出走できるアドバンテージが十二分に活かされる――これが現在の“牝馬の時代”の正体であると私は思っています。
だからこそ、逆に古馬であれば3歳馬に2㎏“くれてやる”ことになる女王杯に出走するよりも、57㎏の牡馬に対して55㎏で出走できる混合GⅠに出走した方が、斤量的にも、また賞金的にも旨みはあるわけで、ベースにある確立された育成技術を武器にバンバン牝馬が好走し、その余勢を駆ってクロノジェネシスやラヴズオンリーユーといった牝馬のなかでもトップカテゴリーに位置する馬たちは、積極的な海外遠征も行うという図式になっているのだと考えています。
それでも、牡馬混合GⅠに出走するには、牝馬のなかだけでなく、牡馬も含めた獲得賞金の額が必要になるため、GⅠに出走するまでの過程において、それだけの賞金、言い換えれば競争実績は持ち合わせていなければならず、その意味で言えば現在の女王杯は、『牝馬の頂点を決めるレース』から、『混合GⅠには少し足りない牝馬によるステップアップのためのレース』という位置づけになりつつあり、ともすれば“空洞化”とも言える今回のメンバー構成ができあがったと見なすことができます。
56㎏が“効いて”きそう……
ここからは馬場の話。土曜日の今日、私が観たのは9レース以降だったのですが、思ったよりもタフな条件になっていると思います。
発表は良でラチ沿いの馬場も、際の1頭分は良好な状態を保ってはいるものの、その1頭分より外側のゾーンは避けて通っている感じもあり、11レースのデイリー杯2歳Sは、4コーナーから外に決め打った馬と、見た目にも茶色いものが目立つラチから2、3頭目くらいを通った馬の叩き合いで外の馬が勝つという結果になりました。
時計的も明らかに掛かっていて、9レースの2000m 3勝クラスが前半61秒台のスローにも関わらず、レース上がりが36秒台に突入する2分1秒台での決着。12レースの1400m 2勝クラスは、これまた34秒台後半の入りで、全体時計が1分22秒ジャスト。
この時計が示すとおり、10月上旬の開幕から型通り馬場は傷んでタフさが要求される条件へと変わってきており、スピードよりもスタミナが求められ、そうなると56㎏への対応というのは、よりシビアに求められてくるものと思われます。
そのため、56㎏への対応という意味では、その重さに対する経験というのが何よりになってくるわけで、先ほども名前をあげたウインマリリン、レイパパレはこの条件をクリアしているものの、この2頭を除く4歳以上の馬は56㎏の経験がなく、近走ハンデ重賞ばかりを走っているクラヴェルにいたっては、前走から+4㎏の斤量を背負うかたちとなります。
“みんな同じ条件”と言えど、3歳馬の2頭に対しては“くれてやる”わけなので、出走してきているメンバーの格、また現在の馬場を考慮したうえでの斤量、この2つのポイントから、今年の女王杯は、“3歳馬優勢”と見て取れるのではないでしょうか。
条件的にはクリアしているが……
では、ここからは印へと移ってまいります。“3歳馬優勢”ですから、本命はもう……、お察し?ですよね……。
◎ 2枠3番 アカイトリノムスメ
おそらく先生やワイドウさんから、「関西の戸崎は……」とか言われそうで、私自身も関西圏における、というか関東圏以外の競馬場での戸崎騎手の騎乗というのは、関東圏におけるそれとは比較にならないほど覚束ないところがあるのは認めます。
しかし、要所では先日の秋華賞しかり、昨年のチャンピオンズCしかり、実は近年ではそこまでポカもなく、今回はちょっと枠が内過ぎるかも……?とは思うものの、この馬はスピードよりもタフに脚を持続することに適性がある馬であること、54㎏で出走できることを踏まえれば、多少通る馬場で割を食っても、ほかの要素で相対的にカバーできるだけの地力はある馬だと思います。
今回はキャリア最短のローテで再びの関西遠征となりますが、関西圏への輸送を含めた牝馬の扱いには全幅の信頼をおける国枝厩舎ですから、出走させる以上、パフォーマンスは発揮できる!と踏んで、本命はアカイトリノムスメとしました。
〇 3枠6番 ランブリングアレー
この馬を評価するのは、今年1月の愛知杯と、3月の中山牝馬S。いずれもタフな馬場、ペースを自分で捉えにいっての惜しい2着と1着で、距離こそ今回より短いですが、やはりタフに伸びつづけるという適性に関しては、メンバーの中でも上位に位置する脚力は持っていると思います。
ただ如何せん56㎏の経験がないのだけは、どうなるか……?であり、前走が明らかなたたき台とはいえ、ちょっと負けすぎ?な印象もあることから、せめて◎のアカイトリノムスメと同じ斤量なら本命も考えましたが、斤量と前走内容を加味し対抗としました。
▲ 5枠5番 ステラリア
秋華賞はそこまで目立つことのない6着ということで、それだけなら……、ではありますが、前走は揉まれない後方で待機するといういままでとは異なる競馬で6着まで追い上げてきました。
気性的に少し難しいところがあるため、前で楽に運ぶか、思い切って下げるか、しか現状戦法がありませんが、“決め打ちの名手” 松山騎手を鞍上に迎えたということで、古馬よりも軽い54㎏をうまく活かすことができれば、秋華賞の6着よりも上の着順まで持ってこられるのでは?という淡い期待を込めた▲としました。
△ 8枠15番 ウインイキートス
関西圏のレースで関東馬を買うときの条件。それは「馬、人、厩舎すべてに関西遠征におけるノウハウ(実績)があること」というのが、私をはじめ競馬仲間たちのなかで、半ば常識となっているところです。
が、このウインイキートスは、その“すべて”が揃っていません……。でも、先ほどあげた「馬、人、厩舎すべてに実績」がないけど、買える条件というのがあり、それが枠順です。
つまり、今回ウインイキートスが入った外枠であれば、関西圏、とくにトリッキーな内回りコースでも、オーソドックスに、安全に回ってくることで好走する可能性があるというものになります。
△の一番手としたのも、まさにこれがハマったからで、着実に地力を蓄えてきた戦歴も踏まえ、ロスは多いけど、普通に走っただけで馬券圏内にいるかも?で、ウインはウインでも、こちらのウインを先に紹介させていただきました。
△ 5枠9番 ウインマリリン
本来であれば!この馬を本命にするつもりで、理由としては、スタミナが求められるいまの馬場コンディション、コース形態、斤量経験、加えて「馬、人、厩舎の遠征実績」のすべてが揃っているからです。
しかし、これは皆さんもご存じの通りかと思いますが、中間の熱発もあり臨戦過程はベスト時のものとは比べものにならないほど良くなく、たとえメンバーレベル的に現状のデキで何とかできたとしても、予定通り本命に推すところまでの地震は持てず、△の二番手でお茶を濁すことにしました。
△ 1枠1番 レイパパレ
お茶を濁すという意味では、レイパパレも同じくで、斤量経験、これまでの戦績からは本命級の存在であることに今回のメンバーであれば疑いようはありません。
ですが、近2走をみれば分かるとおり、2200mまで距離が延びると明らかに甘くなるうえ、気持ち良く逃げてナンボなこの馬にとって、シャムロックヒルやロザムールといった“何が何でも!”タイプがいての1枠1番。展開的にも気持ち良く……、とはいかない可能性が高く、この枠を利してポンっとマイペースに持ち込むことができれば勝ち切るまでみえるものの、距離に不安があり、かつタフな馬場でさらにスタミナが求められるとなるなら、馬券の外に追いやられてしまうことも想像に難くないため、実力が出せれば持ってこい!のウインマリリンよりも下の評価としました。
☆ 6枠11番 ソフトフルート
馬場が一定以上タフな条件で、積極的に前へ出ていく馬もそれなりにいる。ソフトフルートが激走した昨年の秋華賞と今回の条件は、距離こそ違えど似ている感じがしています。
その秋華賞以降の戦績が……、イマイチなところはありますし、初めて背負う斤量で同じ脚が使えるか?と言えば……、ではありますが、スタミナが求められたときの追い込み馬として、この馬を穴候補として推させていただきます。
ということで今日はエリザベス女王杯を予想してまいりましたが、“牝馬の時代”ならではの見方を最後にもうひとつ。このレースは近年における有馬記念のステップレース的な色合いを持っているということです。
これも本当にイマドキな話なんですが、昨年このレースで2着に追い込んだサラキアが有馬記念でも2着に食い込んだり、17年の勝ち馬 クイーンズリングは、有馬記念でもキタサンブラックの2着にすべり込むなど、“牝馬の時代”だからこそ、ここをステップに混合GⅠで活躍をみせる馬も多いといったところです。
そんな視点からも明日のレースは、ここでの勝ち負けだけでなく、年末の大一番にかけてもしっかりチェックしておきたいですね。